The STEM Labor Shortage【邦訳】


STEM系労働力の不足

STEM系の労働力ははたして不足しているのか、それとも余剰なのかという議論が今も続いています。多くの卒業生が就職できない一方で、求人が一部満たされない現実…。要するに求職と求人の単純なバランス以上の問題があるのです。STEMは決して均質ではありません。 生物学の学士号を持つ人が博士号を必要とするエンジニア職に就くことはできません。 米労働省労働統計局は、「あらゆる分野でSTEM危機があるとも、またないとも言える状態だ。答えはどこに注目するかで変わってくる」としています。それでは一体、どこが足りずに、どこがあまっているのかについて見ていきましょう。

STEM系労働力の不足

        2017年12月のSTEM系サービスのコンソーシアムである「STEM Connector」は、2018年中に240万人分のSTEM系求人が満たされないだろうと報告していました。これは米国における問題の一部を体現しています。条件に見合う労働力の不足で、数多くのSTEM職が埋まらないままになっているのです。 たとえば米労働省は、コンピュータスペシャリスト向けの140万人の求人のうち、米国の大学卒業生が満たせるのは、わずか29%のみとしています。 大統領科学技術諮問会議によると、米国のSTEM系求人を満たすには、STEM専攻の学部卒業生を年間34%増やす必要があります。この問題は、大学入学を許可された生徒数ではなく、むしろSTEM専攻の学生数の不足に起因しているのです。

        才能をめぐるこのギャップは米政府機関の一部にも影響を与えています。空軍人事センターでは、電気工学や物理学、原子力工学などの分野で人材が不足しています。こうした分野のとりわけ高い学位を持つ人材が必要にもかかわらず、です。航空システムセンターでは、ソフトウェア工学、製造工学などで同様の問題を報告されています。その他の政府機関でも、システム工学や機械工学、航空宇宙工学、およびサイバーセキュリティなどにおいて、数多くの職種で求人が満たされないままです。つまり、求める分野の高度な学位を持ち、政府機関で働くことのできる米国市民が十分にいないのです。


労働統計局によると、民間部門ではインターンシップや課外活動などを通じて実地経験を積んだソフトウェアエンジニアの需要が高いそうです。石油工学の求人も増えており、かつ 学士号がなくてもいいキャリアへの需要も一部で高まっています。 機械工やオペレーター、技術者など、資格が必要な技術的職でかなりの人材不足が報告されています。

米労働統計局は2017年7月の報告で、2016年5月にSTEM系雇用の割合がもっとも高かったのは、カリフォルニア州レキシントンパーク、メリーランド州、カリフォルニア州のサンノゼ・サニーベール・サンタクララ地域、コロラド州ボルダー、アラバマ州ハンツビルだったとしました。カリフォルニア州ではコンピュータのハードウェアエンジニア職とソフトウェアデベロッパー職がトレンドになっています。

人材不足問題はSTEM教員にもそのまま当てはまります。 ニューヨーク市でSTEM教員クライシスに取り組む団体「STEM Teachers NYC」のChristopher Kennedy氏は、市内の公立学校について、「米国内最大の公立学校制度を有していますが、残念ながら科学の教員数はそれほど多くはありません[中略]物理学へアクセスがある生徒の割合は全体の15〜20%、科学のそれは50〜60%にすぎないといった具合です」と述べています。中等および高等教育で十分な科学の教育がなされていなければ、現在私たちが直面するSTEM系人材の不足に対処することは到底できません。

        Emerson社による第4回年次調査で、「5人に2人の米国人がSTEM系労働力の不足は危機レベルだと信じている」と報告されています。つまりかなり多くの人が、STEM系労働力の不足が今後米国に大きな悪影響を及ぼすと考えているのです。前出のChristopher Kennedy氏は、インフラで対処が必要な工学技術プロジェクトについて、「残念ながらこれらのプロジェクトは遅延し、エンジニアリングもうまくいかないでしょう」と指摘。私たちが今かい間見ているSTEM系労働力の不足が、将来的に重大なインフラ上の問題を引き起こすかもしれないというのです。求人を満たせる適切な資格を持つ人材を着実に生み出していかなければ、市井の人びとの日常生活にまで悪影響を与えてしまう新たな問題が発生するでしょう。

        しかし、問題はインフラだけにとどまりません。 STEMは、米国の経済および世界的地位の保持に不可欠です。米国科学アカデミーは、「互いにますます繋がった世界経済における米国の将来の競争力は、STEMで培った高い能力とスキルを備えた労働力の育成にかかっている」と述べています。

STEM系労働力の余剰  

        米国勢調査局によると、STEM専攻で学士号を修得した米国市民の74%は、STEM系の職業に就ていません。前述したように、STEM系人材の不足が指摘されているにもかかわらず、です。労働統計局は「STEM系人材の需要と供給は市場や地域によって異なる[後略]。機械工学の博士号をもつ人材の需要は、機械工学の学士号をもつ人材のそれとは異なり、生物医学科学の博士号をもつ人材の供給は、物理学の博士号をもつ人材のそれとは異なるということだ」と報告しています。 要するに、不足または余剰かどうかは、職を求めている人がどの分野のどこでどのような資格を持っているか、にかかっているというわけです。

つまり、STEMで成長している分野、余剰が発生している分野はなにかに注意を払うことが大切です。たとえば米労働統計局によると、生物学といった分野では、STEM系の大学教授職が飽和状態にあります。そして、化学および生物医学の卒業生も、バイオテクノロジーや化学系、製薬業界の求人が縮小化したり、海外に流出しているため大打撃を受けています。 2000年以来、米国の製薬会社は30万人の雇用を削減しました。

そして、こうした不足や余剰を管理する上で、私たちが直面する最大の課題のひとつは、未来の仕事がはたしてどのようなものなのか、誰も分からないという事実です。STEM Connectorは、今年小学校に入学する子どもの65%が、最終的にはまだ誰も知らない全く新しい職種に就くことになるという統計を指摘しています。こんにちの生徒は、見知らぬ未来の仕事に就く用意をしていかなければならないのです。2000年の時点で、当時まだ存在していなかったアプリ開発や仮想通貨関連の仕事に就くと誰が想像していたでしょう? 私たちがこんにち目の当たりにしているキャリアは、今から10年、20年先に存在するものを反映してはいないのです。つまり、今後、STEM系労働力の不足を軽減していくためには、STEMの確かなバックグランドをもつ生徒を育成していかなければなりません。

結局のところSTEM系労働力は不足なのか、過剰なのか。2016年の米国立科学財団の言葉を借りれば、詳細な調査でも、米国におけるSTEM系労働力が余剰なのか、または不足なのかについての直接的な「イエス・ノー」の答えは出せません。 答えは常に「場合による」のです。それはまた、「十分」または「不十分」が数の話なのか、質の話なのかでも変わってきます。つまり、教育や職業訓練、人種・民族・性別上の多様性、あるいはこれらいくつかの組み合わせといった問題です。つまり、STEM系労働力の不足と余剰が両方同時に存在するのが現状である、ということになります。

Sources:

https://www.bls.gov/opub/mlr/2015/article/stem-crisis-or-stem-surplus-yes-and-yes.htm

https://www.stemconnector.com/wp-content/uploads/2018/07/64199_Web.pdf

https://www.idtech.com/blog/stem-education-statistics

https://www.bls.gov/spotlight/2017/science-technology-engineering-and-mathematics-stem-occupations-past-present-and-future/home.htm

https://www.bls.gov/opub/ted/2017/8-point-8-million-science-technology-engineering-and-mathematics-stem-jobs-in-may-2016.htm?view_full

https://www.nsf.gov/nsb/publications/2015/nsb201510.pdf

https://www.nap.edu/catalog/21900/developing-a-national-stem-workforce-strategy-a-workshop-summary

https://www.census.gov/data/tables/2017/demo/education-attainment/cps-detailed-tables.html

https://www.hays.com.au/hays-journal/HAYS_1309278

https://ssec.si.edu/stem-imperative

https://www.forbes.com/sites/arthurherman/2018/09/10/americas-high-tech-stem-crisis/#4d9db3b6f0a2

https://cis.org/Panel-Transcript-There-STEM-Worker-Shortage

https://www.industryweek.com/talent/2-5-americans-say-stem-worker-shortage-crisis-levels

https://www.cnbc.com/2017/08/23/why-we-have-a-shortage-of-tech-workers-in-the-u-s.html

https://www.usnews.com/news/best-countries/articles/2018-08-23/americans-think-they-have-a-shortage-of-stem-workers

https://www.emerson.com/en-us/news/corporate/2018-stem-survey