
近年、STEMというワードがメディアや政府関係などで話題になっています。
でも、結局のところSTEMとは何なのか、それはどこから来て、なぜ注目すべきなのか…。初回はそんな基本からお話したいと思います。

STEM(当初はSMET)というワードは、2000年代初めに、米国立科学財団の当時の理事長、Judith Ramalay博士が唱え始めたものです。
STEMは科学(Science)・テクノロジー(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)を表す頭字語ですが、それ以上を意味します。4つの分野にまたがる教育への学際的なアプローチを推進する草の根運動の名前なのです。
米国では10年ほどでSTEM教育が定着しはじめ、2009年にオバマ政権がローンチした「イノベーションのための教育」キャンペーンといった政策もあり、さらに促進されました

STEM教育は、現実世界に則して教えることの利点にフォーカスし、伝統的な教育の「サイロ」状態を解体。
融合された学習環境を通して、科学・テクノロジー・工学・数学関連のトピックに取り組む、というものです。
たとえばSTEM数学なら、練習問題に工学、テクノロジー、または科学の要素も含まれており、生徒は新しく身につけた数学の知識をどう役立てられるのか、その可能性も知ることができます。
ローマ史について学ぶなかで古代形式の弓を製作するといった、4分野すべてにまたがる知識を統合させたアクティビティなども可能でしょう。
STEM教育では、教室のなかだけにとどまらない実践的なアプローチを用いて、問題解決スキルを教えます。生徒は証拠を特定し、科学的方法に従い、発見から論理的な結論を導き出す方法を学ぶのです。このようにして、STEM教育は批判的思考力(クリティカルシンキング)と問題解決能力を養うのに役立ちます。

STEM教育は考察ベースの学習に焦点を当てています。
つまり、生徒は質問をしたり、みずから新しい知識を探求することが奨励されます。
このように、あまり構造化されていない自発的学習のアプローチは、生涯にわたる学びへの情熱を育み、高等教育への意欲を促進します。STEM教育の賛同者たちは、教室内外で行われるアクティビティを通してまとめられたこの戦略が、現代社会の実践力を育てるのに最適の方法だと考えているのです。
この教育は、中等教育および中等教育を終了した生徒に限られたものではありません。
STEMの賛同者たちは、幼稚園の年少からこのカリキュラムを開始するのがよいとさえ考えています。
「私はいつもタイガー・ウッズのような人物[中略]と同じだと考えています。神経の可塑性が活発で、より早く物ごとを理解できるような年齢からはじめければ、チャンスを逃してしまいます」とは、stem.orgの創設者Andrew Raupp代表の弁です。
目標は、その知識がごく自然に子どもの思考プロセスの一部になるよう、STEM関連トピックをはやくから取り入れること。
これはたとえば、非常に幼いころから楽器を習い始めたプロのミュージシャンのようなもの。
工学のような複雑なトピックでさえ、形を変えて幼い子どもに教えることは可能です。

では、なぜSTEMが現代の職場に備える上で非常に重要なのでしょうか。
火星旅行についてちょっと考えてみてください。私たちが生きているうちに現実のものになってもおかしくないこのような旅に備えるには、計算を行う数学者、軌道を計画する天体物理学者、ロケットを設計する航空宇宙技術者、船のナビゲーションを設定するプログラマーなどから成るチームが必要です。
プロジェクトの成功は各分野がどれだけうまく機能しているかにかかってきます。チームを組織することになったとして、もしあなたがこれらすべての分野で経験と理解がある専門家たちを選ぶことができたら、成功の可能性は高くなるでしょう。
さらに、多くの仕事がこれらの分野すべての理解を必要とします。
たとえば土木技師は、もちろん工学を理解する必要があるでしょうが、科学、数学、およびテクノロジー関連も部分的に必要なはずです。
そこでSTEMなアプローチが不可欠だ、ということになるのです。これらの分野は当然のようにつながっているのですから。
テクノロジーがますます世界を支配する未来では、ほとんどの仕事において、4分野すべてを基本的に理解する必要があるでしょう。そこで統合アプローチをとることによって、授業はよりオールラウンドになり、実社会に応用できるようになります。
米商務省によると、STEM関連職種は他のどの職種よりも速いペースで成長しています。
2002年に、Building Engineering and Science Talent (BEST)は、米国の雇用成長の半分以上がSTEM由来と報告。
したがって現代では、よりよい仕事をみつけるための競争に打ち勝つためにSTEMが必要不可欠なのです。これまで述べてきた傾向をかんがみると、今後、この必要性はますます高まっていく一方ということになります。
現代の世界市場において、STEMは国家の競争力の鍵になります。
STEM関連職種だのみなのは技術革新と発明だけではなく、経済の成長と安定も同様です。
STEM Center USAは、「全米研究評議会および国立科学財団によると、STEM分野は総合的に先進国社会の中核的技術基盤とみなされている」としています。
十分なSTEM教育の存在しない国は、遅れをとる宿命にあると言っても過言ではありません。科学的・テクノロジー的リテラシーは、私たちの日常生活において必須条件になりつつあります。
それは今日の生徒が明日の仕事を獲得するために、STEMを必要としていることを意味するのです。
Sources Article 1:
https://www.engineeringforkids.com/about/news/2016/february/why-is-stem-education-so-important-/
http://www.stemcenterusa.com/stem-robotics/what-is-stem/
https://www.topuniversities.com/courses/engineering/what-stem
https://www.lifewire.com/what-is-stem-4150175
https://www.livescience.com/43296-what-is-stem-education.html
https://www.stem.org/about/stem-steam.html
https://www.stem.org/cm/dpl/downloads/content/353/BESTTalentImperativeFINAL.pdf